Adieu
Giovanni

高原で野営する
鋭い冷気に
脚を震わせる

焚き火台で
爆ぜた火の粉が
ひとつ ふたつと
空へと昇り
風に流れて消えていく
魂のようだった
僕は思い出す
毀たれた幼獣の宝物や
取り残された麦畑の紫の薫り
アラルの海の清涼な涙や
崖の極に淀む茶色の棘を

あれは
何処へと
行くのだろうか
飛び立てば
もう帰っては
こないのだろうか

空は暗く
火の粉は
あかあかと
網膜に
軌跡を
残してから
すぅんと消えていった

さよなら
さようなら

高原を冷たい風が行き過ぎる


























自由詩 Adieu Copyright Giovanni 2023-04-02 00:19:39
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