青鷺
リリー

 会社の敷地内にある
 貯水池
 アシかマコモか 
 つんつんと緑、日ごと明るさ増して

 今朝も彼は来ている

 渋い濃度ある黄金色の水面で
 伸びてきた若草は
 彼の青灰色した全体をちょうど半分
 隠しているのだ

 池の中央から外れた あそこが
 居場所なのだろう
 じっくり動かないで前方を見据えている
 鷺の横顔

 池のほとりに一本だけ
 芽吹く柳は まろやかに萌え立ちて
 ほとんど無いような風に枝を垂れている
 午前八時十分過ぎる腕時計を
 確かめた時、
 
 凛然と 彫刻の様にすっくり伸びていた首は
 艶めかしく捩れて後方を見遣り
 また前方へ頭を戻した
 なんと それはさり気なくも
 生き物臭い仕草に見えて

 今、立ち去るのを惜しいとおもう
 この緑すかして ゆらめくものの雄々しさに


自由詩 青鷺 Copyright リリー 2023-04-01 10:50:16
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