風のいろ
リリー

 花の時期を過ぎれば気にも止めないでいた
 児童公園の隅にある
 赤茶けて錆びた鉄の 大きな藤棚

 敷かれた石畳に 風雨で変色したコンクリートの
 ベンチ三脚
 ちいさな葉が滴り落ちる とめどなく
 藤棚の下で 葉のひるがえり
 軽やかに追い掛けながら砂地へと移ってくる

 なに色とも分からない藤の葉の漣は足元に流れ来て
 二羽の鳩が羽ばたこうともせず
 地面に眼を優しく這わせて息づいている

 佇むわたしの耳に
 濃い焦げ茶色した大きな葉が一枚
 そり返る葉先の丸くなり跳ねるように転がって
 緩やかに揺れるブランコの傍まで行くと休んだ

 再び歩を進める
 スニーカーの靴音が公園を通り抜ける
 右腕に提げる膨らんだエコバッグからは
 あふれ出る小カブラの葉が青々として

 厚みある雲の切れ間からのぞく あおぞら
 白っぽく拡ごる陽にむけて
 のべた小指に血の色の透けるのを見る
 私は自由 若い日のような

 公園を抜けると 集合住宅の
 ベランダの柵から見える干し物がどれも旗めいている


自由詩 風のいろ Copyright リリー 2023-03-26 10:00:27
notebook Home