感謝の小旅行
秋葉竹




むかしはびじんでそれだけでみせもだいはんじょうしてこいびともよりどりみどりだったろじうらのすなっくのままさんみたいにさみしいにぎやかさ

ちょっと、小旅行。

むかしは美人で、
それだけで店も大繁盛して
恋人もよりどりみどりだった
路地裏のスナックの
ママさんみたいにさみしい賑やかさ


ある町町の夜景を
電車から
眺めながら
車窓にうつるじぶんのマスクした顔を
消してやりたいなぁと
想ったりした

老いたなぁと。

あ、違うよ、
むかしは美人だった、って言葉は
町の夜景にを喩えるときに使った比喩で
いまの、老いたなぁ、のため息とは
関係ないんだかんね。

冷たそう、って
云われたことなら、
なんどもあるけど、ね?

しかも
じっさい、冷たいみたいだよ?

知らんけど。

僕的には
表現が下手なんだろうなと
自己分析してるけど。


ま、
そんなことは
置いておいて。


電車の車窓からみる
ひとつの光もない
ただ、のっぺりとつづく真っ黒な闇は
たぶん
野山なんだと想う。

そして、
そんなところばかりだったから、
そんなところで生きてきた
僕たちの先祖のことや
いま
生きさせてもらってる
夜も灯りの途絶えない街のありがたさを
想ったんだ

なんかよく云うでしょ?
人類は、
地球創生から今までを一年とすると

12月31日 午後11時58分52秒 
人類が農耕牧畜を始める(1万年前)

12月31日 午後11時59分46秒 
キリスト降誕

そして
電気なんてものが
夜を闇から救い出してくれたのは

12月31日 午後11時59分59秒 
20世紀が始まり、終わる

その光の中に生きられる
あたたかさ
そのあたたかさの中に生きられる
輝くしあわせ

ありがたいなぁと
想ったんだ
いつも
ひねくれて
地べたばかりみてたこの僕が、だよ?
あゝ、なんて
あたたかくて、しあわせで、
安心で、安全で、快適な、
夢のようなやさしい空気の漂う
世界に
生きさせてもらってるんだろう、と。

ありがとうございます、
むかし、飢えに死んだおおぜいの人たち
むかし、獣に殺されたおおぜいの人たち
むかし、寒さに死んだおおぜいの人たち
それを、克服する『光』を
考えだしてくれた偉大なる先人たちの
叡智
ありがとうございます

それで、
ようやく
こんなくだらない僕でも
なんとか生き延びていけています



車窓から
ポツーン、ポツーン、と
輝くおそらくは民家の光をみながら

そんな過去への感謝を
してしまった

むろん、
いまは、いまだって、
たいへんな想いで
それこそ、
死にたいほどの苦悩をかかえて
みんな、みんな、
生きてんだけどね。


でも、
あのころ震えた恐怖には
人類として
打ち克ったんだって
あのころの「絶対的恐怖」だけは
先人がなんとかしてくれたんだって
そこはやっぱり
感謝しか
無いよね?
 













自由詩 感謝の小旅行 Copyright 秋葉竹 2023-03-25 16:55:21
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