ゴルゴ症候群
tonpekep
だったらそうすれば
そう言いたそうな女がいて
ぼくは6910円分の切符を買い
電車に乗ることにした
駅弁はビジネスランチを買った
行き先はきれいなお姉さんが乗った反対の方向に決めた
良い香りがした
けれどもそれはプラットフォームの
光の加減かもしれなかった
ずっと古い海が確かに見えた
そのときぼくは神さまと交尾をしていた
ずっと新しい海ではぼくは海岸の砂であった
ぼくの上では神さまは誰かと交尾していた
精液がぼくの願いと受精したとき
それぞれに時間は産卵したけど
ほとんど悲しい物語ばかり生まれた
ガタンゴトンとレールは
どういうわけかぼくの心臓に延びていた
空は車窓の端っこにしがみついていた
千切れたところから夕くれが始まった
ぼくは強気で下車をする
食い終わった駅弁には一粒の米が残った
米のそばから夜が始まった
夜の中に女がいて
子供のように米粒を
やさしく抱きしめていた