呼吸
由比良 倖

私は死のうと考えて、
まるで朝から夢見るみたいに
一生分の溜息を、呼吸している。

私は誰に対しても場違いで、笑いながらもずぶ濡れで
温かい食べ物と嬉しい抱擁と、私を
絞めて殺してくれる腕を探している。

死ぬだけの意味を欲し続けてる
私は脳を半分切り取りたい

歴史も何もありません、泣くだけです。

今まで死んだ全てのひとを、
愛しく感じてみたりもしています。
彼らと同じ地点に佇んで、(しかしこころもとなく)、
私はここで、ひとりではない。

生きていくことの静かな温かな、
時の止まったような愛情を感じます。

遠い、夢も絶望も、
胸の底に光る、虹のようです。

私が書けば書くほど、私が泣けば泣くほど、
未来は懐かしい。

何もかもが光る墓場で、
太古の粒子も、あなたも私も、
何もかももう、区別が付かない。

私は浮いて、もう何十回も、
何億回も、自己や事故死を、経たあとに、
覚束ない情熱が、
目の奥に残るばかりです。

詩とは言葉の切符です。
詩とは単なる出口です。
(ひとは檻の中の動物に羨望を覚えます)


自由詩 呼吸 Copyright 由比良 倖 2023-03-18 13:33:14
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