呼吸
由比良 倖
私は死のうと考えて、
まるで朝から夢見るみたいに
一生分の溜息を、呼吸している。
私は誰に対しても場違いで、笑いながらもずぶ濡れで
温かい食べ物と嬉しい抱擁と、私を
絞めて殺してくれる腕を探している。
死ぬだけの意味を欲し続けてる
私は脳を半分切り取りたい
歴史も何もありません、泣くだけです。
今まで死んだ全てのひとを、
愛しく感じてみたりもしています。
彼らと同じ地点に佇んで、(しかしこころもとなく)、
私はここで、ひとりではない。
生きていくことの静かな温かな、
時の止まったような愛情を感じます。
遠い、夢も絶望も、
胸の底に光る、虹のようです。
私が書けば書くほど、私が泣けば泣くほど、
未来は懐かしい。
何もかもが光る墓場で、
太古の粒子も、あなたも私も、
何もかももう、区別が付かない。
私は浮いて、もう何十回も、
何億回も、自己や事故死を、経たあとに、
覚束ない情熱が、
目の奥に残るばかりです。
詩とは言葉の切符です。
詩とは単なる出口です。
(ひとは檻の中の動物に羨望を覚えます)