モリントの空
モリマサ公

旅みたいなばしょだった
あの時のどうにもならなさったらなかったな
いつ死んでも全然おかしくなかったし
いつ生まれなくても小さな怠惰にすぎなかった
うねうねとうねる波止場で
わたしは貝類を惨殺し貝類の舌にキスをする
ぽたっぽたっと落ちる涙しおからく痛い
内臓を全部みせてやりたいよ大好きなきみに
今過ぎて行く瞬間また次々に来る瞬間
そしてアもイもウもない無音の慟哭
カモメら開ききって行きすぎて
押し黙っている座礁船、半欠けの
のびてきた高層ビルの限界、ボカロの声
いやまじに死んだら怖いっていう考え方
もうだめじゃないですか
生まれてきてよかったなんてこの畏怖には
ただあることをつづける
花束みたいな仮死のプリズム
そのときわたしもすごくエモくて
叫び足りない感満載、架空が湧き出て
最近、家がわからなくなったりする
夢と現実の境に折半された
異次元ポケット
ドアとドアとドアのはざかいに
セントラルパークで眠りこける飲んだくれも
無邪気でかっわいらしー赤ん坊も
すれちがいざまに会釈していく女子も
破水してゆく、恥ずかしい
恥ずかしいあなた
恥ずかしい地球
でも
これが幸せでなきゃ何が幸せだっていうの
世界中で一番泣きたい人たちよ
世界中で一番発狂している人たちよ
水平線に首吊りの首の陰が言う
「生きてたのだよ、きみもわたしも目一杯」
ぶらさがってスカートはいて恋して
殺す、突然たくさんの波が打ち寄せてきて殺す
たくさんの生命体、殺す
十指のあいだに流れ落ちるのは
これは意味なき真紅の体液
茫洋として低い空をみた。空をみたんだ




(小林レント氏との共作)


自由詩 モリントの空 Copyright モリマサ公 2023-03-08 17:58:45
notebook Home 戻る  過去 未来