桜並木
ひだかたけし
朝の歩道沿いの桜並木、
垂れ伸びた枝の此処彼処
赤らみ膨らむ無数の芽、
じわりじんわり時を待つ
老婆が立ち止まりそれを見ている
ぶつぶつ宙に言葉放ち
じっと動かず凝視して
この六十三回目の春始め、
私は桜並木に佇んで
これら風景の一部と化す
桜はもうすぐ花開き
絢爛なその命を誇るだろう
老婆はその時、居るだろか
私はその時、居るだろか
時はいよいよ進みながら
この瞬間を置き留め、
芽となり老婆となり私となり
確かな一時を跡付ける
この絶対の光景に眩暈して
時は意識にて伸び広がる