三度目の小径
リリー

 会社の正門を出ると横断歩道を渡って右折する
 そこに
 名前も知らない神社がある

 給料日に銀行へ寄る時だけ利用するようになった
 神社の境内のわき道
 一人通れる足幅の草だけが禿げて
 出くわす犬と
 リードを持つ人へ挨拶する

 それは三度目に犬と出くわさないでいた
 陽の 落ちるには未だ早い小径
 境内を見ると
 密になる樹が影をおとす地の燃えている
 束となって連なる松明の様な ほのお

 こんなにも
 彼岸花が根を下ろす場所とは知らなかった

 夕目暗になるのを待ってみることにしようか

 境内はまるで能舞台でもみるかのようで
 聞こえてくるかもしれない
 四拍子が しめやかに胸へ忍び寄り
 掛け声は気持ち良い冷やかさとなって


 


自由詩 三度目の小径 Copyright リリー 2023-03-01 12:27:30
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