にじいろ
吉兆夢

胡座をかいた膝のあいだにむりくり
もう小さくもないからだを収めて
炬燵に当たる
そうやって君は私と
お団子になる
つむじの巻き方が似ているとか
爪の形が似ているとか
やわらかなものだけくっつけてうとうとと
テレビ小説を眺めていれば
くしゅん。
窓の外の黄色い田圃が目に入って
「遺伝」「アレルギー」を検索してみる
いつか気づくのかもしれない
お団子は
君や君を抱いてる私、私のうしろ、そのうしろにも
ずっとずっと連なっていて
抱きしめることは
それらごと
串刺しにすることでもあると



ラララララララー♪
ヒーターから延長のお知らせが流れて
星のように結露は流れて
湯呑みの中では
いつかの子どもが
みかんを剥く
とてもていねいに
そのまま
なんてことのない顔で
気球の皮まで剥いてしまって

 あか、き、しろ、みどり、ももいろ、みずいろ、だいだい、
 また あか。

  (裸になったバーナーは身軽だね)
  (飛べないけれど荷物にならない)
                  (よかったの)

首を傾げたまま
剥がし終えた気球の皮を炎にかざして
くるくると
なんてこともない顔に
なんてこともある色が透過して
笑っちゃう
パチ屋のネオンサインみたい。



あなたみたいになりたくない
      と
あなたみたいになってしまう
      は
竹串のお尻と先っぽなのかもしれない
酒や博打を遠ざけても
腹帯に鏡を仕込んでみても
球皮のなかの炎の色は
とてもよく似ていた



十一月のよく晴れた午後
君と連れ立って畦道を行く
空から零れるひの
ひと噛み
ひと噛みごと
手向けなのだと欠伸を下せば
袖を引かれて
君は、二時、だという
虹、ではなく
にじ。
にじ。
声にするたび逆さのアーチが君と私の鼻下に架かって
七色の声がどこまでもどこまでも
お団子になって飛んでった。


自由詩 にじいろ Copyright 吉兆夢 2023-02-26 21:51:30
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