ガラスの外れたあばら窓
菊西 夕座

神に祈りを捧げてみても

祈りのなかにも神がおり

神は透ける祈りを楽器にこめて

あたかも空気が氷と化すように

不変の裸像を音色でかたどる

かくして私がいつも祈るは

心に黙した格子窓

ガラスの外れたあばら窓。

透き通る本が格子の間から

外へと落ちてひらいたページ

そこから祈りは鳥になる

朽ちてゆがんだ窓枠にさえ

光輝な朝日が射し込むように

つがいの燕が格子におりて

金の誓いを隙間に交わす

やがて虜囚は気づくのだろう

救いは傷をふさぐのではない

ひらいた傷の空白に宿ると

歌う宝石をはめた指輪より

シャボンを透かす輪のほうがいい

輪っかの穴にも神は宿るが

「神」の字にある十字の窓枠

そこから野外を見つめていたい


自由詩 ガラスの外れたあばら窓 Copyright 菊西 夕座 2023-02-25 09:36:38
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