ガラスの外れたあばら窓
菊西 夕座
神に祈りを捧げてみても
祈りのなかにも神がおり
神は透ける祈りを楽器にこめて
あたかも空気が氷と化すように
不変の裸像を音色でかたどる
かくして私がいつも祈るは
心に黙した格子窓
ガラスの外れたあばら窓。
透き通る本が格子の間から
外へと落ちてひらいたページ
そこから祈りは鳥になる
朽ちてゆがんだ窓枠にさえ
光輝な朝日が射し込むように
つがいの燕が格子におりて
金の誓いを隙間に交わす
やがて虜囚は気づくのだろう
救いは傷をふさぐのではない
ひらいた傷の空白に宿ると
歌う宝石をはめた指輪より
シャボンを透かす輪のほうがいい
輪っかの穴にも神は宿るが
「神」の字にある十字の窓枠
そこから野外を見つめていたい