岩躑躅 いはつつじ
AB(なかほど)
水を引き 平城山宵の 月を溶く
谷田平田に 降る人の声
みずをひき
ならやまよいの
つきをとく
たにだひらたに
ふるひとのこえ
石上 其の稲穂に 乗り移る
現の神と 雷神と
稔待つ日々 長閑なればと
いそのかみ
そのいなのほに
のりうつる
うつつのかみと
らいじんと
みのりまつひゞ
のどかなればと
岩躑躅 はやに咲く野の 躑躅にも
ついと光の 浄の瑠璃の音
いはつつじ
はやにさくのの
つつじにも
ついとひかりの
じょうのるりのね
門田に 隈無く渡る 皐月の瀬
栗の気配の 満ちる宵
千切る思いは 彼方の星々
もんでんに
くまなくわたる
さつきのせ
くりのけはいの
みちるよい
ちぎるおもひは
をとのほしぼし
未だなのか 頼みの方は もうすぐか
見えないままの 無殺生
かの蜘蛛の糸 もう少し待つ
まだなのか
たのみのかたは
もうすぐか
みえないままの
むせっしょう
かのくものいと
もうすこしまつ
みなつたふ いそのうらみの いはつつじ
もくさくみちを またもみむかも
万葉集、舎人