アイソニアの騎士の焦慮(四)
朧月夜

「では、一つの情報があります。騎士様。わたしが、
 どこからこの情報を得てきたのか、ということはお問いになりませんことを。
 イリアス・ナディは、このカラスガラの北方にある、
 バルケスの塔というところに幽閉されておいでです」

そのヨランの言葉は、一つ一つアイソニアの騎士を試すかのようであった。
「バルケスの塔? それはいかなる場所か?」
「生きる者にとっては、恐ろしい場所です。なぜなら、
 そこでは、生きること以外に何にも保証されていないからです」

「生きながらに、死人の心持ちを味わうということか?」
「まさにその通りです。この情報を得たときには、わたし自身も
 生きた心地がしませんでした。この場所は恐ろしい場所です」

「ああ! イリアスがそんなこの世の地獄にいるとは!
 それに比べて、俺はどんなにか楽をしていることか!
 俺は今、この身の愚かさを嘆く! そして、この身の無力を嘆く!」


自由詩 アイソニアの騎士の焦慮(四) Copyright 朧月夜 2023-02-22 21:54:10
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クールラントの詩