オーバ・ニーチェの戦士エイソス(四)
おぼろん

戦士エイソスは少なからず落胆した。この度の企図に、
エインスベルを取り込めれば申し分ないと、思っていたからである。
しかし、オーバ・ニーチェの反クラース側にとっても、
エインスベルは敵か味方が判別がつかないもののようであった。

「ウルム殿。ここは、エインスベルに対して恩赦を与えましょう。
 そして、千人隊長に任じるのです。エインスベルは、必ずや
 クールラントの利益にかなう働きをしてくれると存じます」
「千人隊長と言ったか? それは早計であろう……罪人が即指導者になるなど……」

「ですが、エインスベルの能力を持ってすれば、
 千人、いや、万人の部隊を率いることなど、容易なことでしょう?」と、エイソス。
「事はそう簡単ではない。今は、エインスベルは相反する勢力の間で板挟みになっている」

「だからこそ、エインスベルを千人隊長に!」
「くどい! お前には二度言うべきことを三度言わねば分からないのか!」
「いいえ、御身の思うままに」戦士エイソスは、自身の立場を明らかにはできないもどかしさを痛感した。


自由詩 オーバ・ニーチェの戦士エイソス(四) Copyright おぼろん 2023-02-20 17:31:43
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クールラントの詩