女學生日記 五十五
TAT



二月十五日 木曜
天氣 晴
起床 六時三〇分
就床 十二時二〇分

裁縫は型紙を斷ちました
理科は今日から鉱物を習ひます
六限は手藝でした
夜おそくまで手藝をつくつた
今日上條さんが窪さんのチヨツトした問に急に怒つて先生がお見えになるのに泣き乍らおこつてらしたのでハラ〳〵した


どうした事でせうね
今はもう仲好くなつてゐましたか



二月十六日 金曜
天氣 晴
起床 七時〇分
就床 十時三九分

朝礼講堂
花村先生よりあす炭俵を持つて来ることについてお話があつた
体操は薙刀でした
数學の時松岡先生が五年後の日本とか家庭とか婦人の進出について演説の様に話しをされたのでとても面白かつた
放課後の六限は手藝でした
ピンポンをやつて歸つた
夜よだれ掛の布を買つて来た
炭俵は何時だつたか新聞にそんな事が出てゐたので八ツ程ためてあつたが月曜日に置場所に困つて全部賣つてしまつたから困つた



二月十七日 土曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 十時〇分

朝 前の小母さんの家で炭俵を一つ借りて行きました
先生が名札をつけることを言つて下さらなかつたので學校へ行つてから大へん困つた


之は僕がわるかつた

数學の補欠は上條さんが言つて下さらなかつたので忘れてしまつた
そして私が非常に心配をしてゐると上條さんは平氣なもので「忘れて来たもの仕方がないやない」と如何にも薄情なので私は遂泣いてしまつた


皆仲好くしなさい
ひどいことを云はれても出来るだけ怒らないやうにしなさい
向ふは何気なく云つたのかもしらない

英語は品詞を習ひます
放課後ピンポンを練習した
歸りに吉田先生が太平町の家に来てゐらつしやるとお聞きしましたのでお伺ひした
先生は非常にお元氣で色々お話をして下さいました
その時「とうとうこんなになつてしまつて」と言つて淚をこぼされた時は本當にはつとしました
先生のお姉さんが居らつしやいました
先生は足が下につけられないし此處に居ると學校へ行きたくなるから明日歸ります等と言つて居られました
戸に松葉杖がもたせ掛けてあつたので武岡さん等は淚ぐみなさいました
しばらくお話をして辞した
今日先生をお尋ねして本當に好いことをしたと思つた


よい事をしました



二月十八日 日曜
天氣 晴風强
起床 五時三〇分
就床 十時十分

朝母を起すのも氣毒だつたので自分一人で起きて用意をし


大変結構です

六時半に家を出て小ちやんの家へ呼びに行き皆と一緒に驛へ行つた
七時四分の電車で梅林まで行きそこで下車して白山小學校へ行つた
試合が始まり先ず佐々木對松義で十五|一で大勝
次は女子商業で仲々强い去年カツプを取つたのだから
之も十三|九で勝ち次が共同毛織である
大人の人達ばかりで白粉をつけて頬紅をつけておしやれである
これにはとう〳〵六|十五で敗けてしまつた
晝食を控室で食べ優勝試合を見た
遂に共同毛織が優勝した
すぐ歸る
電車の中で花村先生が居眠りをしてゐて帽子を前にころんと落されたので大笑ひした
四時二十五分に歸つた
花村先生に言はないで下さい(帽子のこと)



二月十九日 月曜
天氣 晴
起床 六時三〇分
就床 十時三〇分

朝礼教室で島先生より色々の事について御話がありました
放課後卓球を練習して歸つた
今日父は大祖父の法事に行かれた
夜人形を作つた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 五十五 Copyright TAT 2023-02-19 21:09:37
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