向こう側、かな
坂本瞳子

あんまり好きじゃないな
そう思った
それだけのこと

雨上がりの空
若草の匂い
少し大きな靴が鳴らす音
山田さんちの前を通ると灯される照明
朝六時の時報
「さようなら」って別れの挨拶

まだまだある
好きじゃないこと
そんな気がする

嬉しいこと
楽しいこと

思い出せない
今日に限って
そんなこと
浮かんでこない

今日は
どうしても
思い出せない

ただそれだけのこと


自由詩 向こう側、かな Copyright 坂本瞳子 2023-02-12 22:55:13
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