氷雨
リリー


 湯豆腐の店が恋しくて
 南禅寺に出かけてみた
 松の葉に
 雪の子が降る
 池にも雪の子が降る

 戸をかたく閉じる
 まちの白い舗道に降る

 車の走行音にも降る

 誇り高い姿勢をした雪の子は
 遠い旅路に疲れると
 京都大文字山の火床から登る階段で
 ひっそりと地に伏して
 はじめて安堵していた


 


自由詩 氷雨 Copyright リリー 2023-02-11 18:33:13
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