澱み
リリー

 何時なのか
 知るつもりもなく
 近すぎず遠すぎもしない
 道路工事の音が耳に心地よい

 薄地なカーテンシェードで遮られた
 街路灯の漏れ込むワンルーム
 あそこの窓が
 月明かり映る海面ならば
 敷かれた一枚のシングル布団は
 透明度高い海の底

 身の隣り合う彼の眠りは深いのか

 抱きしめてくれる彼との夜はいつも
 一脚のグラスにゆっくりと注ぐ
 白葡萄な気のします
 澄んだ琥珀色を仲良くながめる
 若い二人は芳醇な甘味とはいかない
 口に広がる香りを楽しむだけ

 隣で寝入る彼は青い海星
 あたしにとっては
 たった一つ見つけた うみのほし
 今夜の彼が抱きしめたのはウニだったのか
 それとも貝 どちらにしても
 二人とも泳いで行けない似た者同士

 泳げない女心は銀の鱗のお魚に
 目移りすることもあるのです
 だからクルリと彼に背を向けてまた
 眠りの淵におちていく



自由詩 澱み Copyright リリー 2023-02-10 17:28:09
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