どんなに夢中な世界だって隙間はもっと広い
菊西 夕座


わかれの歌が、近づいて わたしの口に
  入ろうと するも留守です。
きた甲斐もなく 歌、引きかえそうとして
  北風にうたれました。来たばっかりに。
ライラックの花が くちびるにながれて、
  くちはてる歌が リラ色に沈みます。
しずまりかえる 調べを 留守歯んがすきまから
  スゥスゥもらし くち荒みます。
おさないころの 淡い 恋のひとが
  不意に帰りきて 夢のなかでほほえみ、
はにかむわたしの 手をふる 袖口は、
  ひらひらりらと歌い ちぎれ深まる深淵。


自由詩 どんなに夢中な世界だって隙間はもっと広い Copyright 菊西 夕座 2023-02-05 16:10:57
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