human being
竜門勇気

話し疲れ、悲しみ疲れた窓に
初めて肩を抱かれた、夜
キメラの憂鬱に憧れて
焦げたフライパンに玉子を落とした

傷つき飽きて、しまった
もう痛いことも特別じゃなくなって、しまった

庭で拾った木の枝をコップに入れて
透明なスピリッツを注いだ
特別で新しいにおい
不完全で継ぎ接ぎだらけの愛着

血管の中の箱庭は
焦げたたばこの葉っぱ
夜に鳴く、けだもの
遠くで列車が消えていく
瓶の中でガスのキャップが外れる

歩き疲れ、嘆き疲れて乾く
壊れた警告灯、夜
盗賊の爪に詰まった砂粒が
焦げたフライパンに玉子を落とした

ヒドラの住処では誰だって
多分、人間扱いしてくれるよ
昔、白人だって黒人を黒人扱いしてただろ
もうそこに行こう
不揃いの機関銃で呼吸する
あのとき、黒人だって白人を白人扱いしてたわけだし

鞣された道の上で、影は従順
骨だけの魚と、暗がりで生きる耳
何かに繋がって雨を脅迫
ロイド眼鏡をかけたニセモノ
よく出来ていてまるで本物

言葉に疲れて、悲しみ疲れて
痛みに飽きた未来に
引っかき傷でできた頑なな伝言
何かに繋がれていた
それはずっと、ずっと
僕を人間として扱った


自由詩 human being Copyright 竜門勇気 2023-01-29 01:21:15
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