飽食
オイタル

私の名は飽食
私の腹は今日もはち切れんばかりです
昨日は沈んだ色のアジフライを食べ
明るいチョコのラムの香りを味わいました
明日ザクロの黒い輪郭をねぶり
たぶんそれから薄いコーヒーを飲むのです

私の食卓へようこそ
お好きな椅子に掛けてください
あなたから給仕までその距離は数歩
あなたから隣人までその距離は無限

私は貧しい
両手にひと抱えのエビを尻尾までしゃぶらねばなりません
私は貧しい
松茸の汁の染みた茶碗を縁まで舐めなくてはなりません
私から飽食までその距離は数歩
私から貧しさまでその距離は無限

私の貧しさを笑うな
私の飽食を笑うな
私の貧しい飽食を笑うな

足元の犬に端の欠けた乾いた鳥の骨を
それから落ち窪んだ瞳に美しい花びらを

その名をもう一度問うていただきたい
私の名は飽食
飽食であります


自由詩 飽食 Copyright オイタル 2023-01-28 08:15:45
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