オスファハンの戸惑い(四)
朧月夜
「ライランテは、いや、アースレジェは直(=じき)に大戦に突入するだろう。
今回は、とくにヤーコンの動向も気にかけておかなければいけない」
聖王オアシムの予感が当たっていたか、そうでないかは、
ここでは記さないでおこう。ただ、オスファハンの戸惑いは消えなかった。
「ヤーコンですか。ヤーコンに存在しているのは、いずれも小国です。
ライランテや、ましてやアースレジェの今後に影響を及ぼすことはないでしょう」
それは、オスファハンの予想であり、期待でもあった。
「我が国も、小国と言えば言えるのだぞ?」オアシムは答えた。
オアシムは、自分しか知らないヒスフェル聖国の秘密を知っていた。
それは、信頼の厚いオスファハンやナジェスにも明かされていない。
聖王たる自分の血族だけに許された、公然化してはならない秘密なのである。
(それにしても、エインスベルは何を企んでいるのか。いや、
ドラゴンたちの降臨によって、その思いは粉砕されたはずだ。
エインスベルよ、どこへ行く?)オスファハンは限りない疑念のなかで思った。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩