オスファハンの戸惑い(三)
朧月夜
「他国にハーレスケイドのことを悟られてはならぬ」
「はい。しかし、オーバ・ニーチェも動き出しているということです」
「クールラントの諜報機関か。もしや、我が国の人間のなかで、
オーバ・ニーチェに通じている者がいるということか?」
「それは分かりません。しかし、祭祀クーラスという男を侮ってはなりません」
「クールラントと近づき過ぎたことは、失敗だったかもしれませんな」
国務大臣のナジェス・ガランドゥが釘を刺すように言った。
「もし、戦争が何年か遅ければ、事情は変わったと思うか?」
「はい。アースランテは滅びていたかもしれません。あるいは、
我が国との同盟をもって、ライランテを支配していたやもしれません」
「すべてはあの魔女、エインスベルのせいだと我は思っている」
オアシムのその言葉に、オスファハンはわずかに顔をしかめた。
(エインスベルは我が娘も同然。しかし、わたしの手からはすでに離れている……)
「それはないでしょう。エインスベルは、今やクールラントからも追われる身です」
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クールラントの詩