イリアスを尋ねて(六)
朧月夜

「この一か月、いいえ、正確には二週間の間に分かったことですが……」
ヨランはもったいぶった口調で再び話し始めた。
「イリアス・ナディは、カラスガラの北辺にある
 バルケスの塔という場所に幽閉されているという話です」

エインスベルは息を飲んだ。ヨランの諜報能力に対して。
「それでは、わたしも行こう。イリアスは、この戦争の鍵を握るかもしれない」
「理由はそれだけですか? あなたには他の理由があるのではありませんか?
 ですが、わたしはあなたはそこへは赴かないほうが良いと考えています」

「それはなぜか?」エインスベルは尋ねた。
「祭祀クーラスは、アイソニアの騎士にあなたを殺させる心づもりでいます。
 そして、やがてはその刃をアイソニアの騎士にも向けるでしょう。

 祭祀クーラスとはそういう男です」ヨランの推測は的確だった。
すでに刺客として放ったフランキスは、祭祀クーラスと結託していた。
バルケスの塔には、何重もの罠が張り巡らされているだろう。それは確実だった。


自由詩 イリアスを尋ねて(六) Copyright 朧月夜 2023-01-26 22:48:59
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クールラントの詩