ナハティガル
ちぇりこ。

「星ころし」

悲しいことがあると
星を見ていた
お姉ちゃんは夜に泣く
一番小さな星を探していって
順番にころしていた
悲しいことが多すぎて
埋葬された星の数は
あと一つで百になる
わたしはまだ生存している
一番小さな星を隠した
ポケットの中で
シャリシャリ音がする
しっ!気づかれちゃうよ
わたしは一番小さな星を
首飾りにして
お姉ちゃんにあげる
埋葬された星たちは
星標べを辿って葬列をなし
今夜わたしの窓辺にやってくる
そんなおとぎ話を信じていた
無邪気な夜の子



「星あそび」

ごうごう と
星の流れる夜には
妹はわたしのベッドの中に
潜り込んでくる
星が うるさいの
と言って 背中をわたしに預けて
丸くなる
そんな夜は つるん とした
白く ぼわぼわと発光する
小さな繭のような妹の背中に
気づかれないよう
小さな星を埋葬する
小さな傷を小さくつけて
気づかれませんように
なんでもないよ
悲しいことは沢山あるよ
今夜は星が大人しいね
妹はわたしの膝の上に
ちょこんと座って
窓の外を見上げている
小さな傷が小さく点滅している
まるで蛍の印
わたしが そっと触れようとすると
小さな傷は一つずつ羽ばたいてゆく
どうしたの?
なんでもないよ
変なお姉ちゃん!
今夜 妹は星標ベになる
一番小さな星が
妹を連れてゆくのかも知れない
そんなおとぎ話を信じたい
無防備な夜の子



自由詩 ナハティガル Copyright ちぇりこ。 2023-01-26 19:25:40
notebook Home 戻る