イリアスを尋ねて(四)
朧月夜

「それが、エランドルに利益をもたらすとは思えないが……」
「エランドルの思いには、隠された一つの秘密があります。
 エランドルは、ククリスというかつての恋人の復活を望んでいるのです。
 そのために、彼はハーレスケイドという時の止まった世界で生きてきました」

「ククリス? それは誰か?」
「私が調べた限りでは、彼女は生前精霊使いだったそうです。
 しかし、魔導士ウィザム魔導士ウィザム以外との愛は禁止されていました。
 彼は、彼女を失ったことを、三千年間ずっと悔やみ続けています」

「三千年間の恋か? この無常な世の中において、不遇なことだ」
「あなた様も……イリアス殿をお慕いでしょう? いかに高名な魔導士とは言え……」
「愛や恋心は変わらないということか。しかし、そんな個人的な理由で?」

「エランドルはきっと、この世界のあり様を変えようとしているのです。
 そして、それを妨げるだけの力を持った者は、このアースレジェにはいない」
「理想と欲望とは紙一重ということか? しかし、それはあまりにも空しい」


自由詩 イリアスを尋ねて(四) Copyright 朧月夜 2023-01-25 22:35:37
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