金魚
日々野いずる

田舎のおばあちゃんの家に金魚がいて、外の手水鉢の中に、雪が降って、透明なしんとした氷が張って、金魚は沈んでいた、それが私の暖かな家の玄関の金魚鉢に沈んで、夕陽も沈んで、私は誰なんだろうて思った。餅つき機でついた餅、カビさせちゃって一個も食べなかった。だってどのタイミングで食べればいいかわからなかった。必要なことしかできない。毎日が過ぎて、頭が金魚の餌やりに占拠されていて、金魚はいきてる。よかった、て。寂しさのために飼ったのに、そればっか。心がすうすう、餌をやる度思う、玄関寒いから。本当に必要なことなのかな。頭がおかしい。何もかも。何もかもでくくりたくなる。金魚の赤い尾ひれがひらひらしててかわいかった。色あせてきちゃったから赤いエサをあげるようにした。でも本当は飼ってなくて、飼ってたのは実家の庭に埋めたし、赤くてかなしかった。向いてないなて思った。カーテンにひらひら揺れていた夕陽が照らした頬、青白く冷えて、祈りだけ立派。今度こそ待ってて、沈んでった、


自由詩 金魚 Copyright 日々野いずる 2023-01-22 19:38:33
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