散歩道
リリー
京福電鉄嵐山本線が近くを走る
右京区の街の中
名前も知らない小道を二人で歩く昼下がり
小道には金網の張ってある敷地に沿って
大型プランターが路端に並び
主枝を伸ばし茂る葉と
溢れるほど実が成っているミニトマト
隣りには茄子の紫
これはシシトウか青唐辛子のどちらだろう
その隣にはまた胡瓜の緑
オクラの花は薄黄色
指先でちょこっと触れてみるミニトマトの
赤
「とるなよ!」
同級生の彼が私へ浴びせた
本気な声色
ふたりで進む小道には歩を止めてしまう
ものばかり
それは民家の軒下に並ぶ鉢植えの花
それは日が照りつける可愛らしい三輪車
それは古民家の軒先に置かれた睡蓮鉢
やがて進む正面が四条通
小路横切るバスの車体が白く小さく見えた
雑多なビルや駐輪場の路傍を歩く
隣で歩調を合わせてくれる
彼の腕を引き寄せて
二人は黙ったままで手をつなぐ
大通りまではまだもう少し
バス停まではまだもう少しある
彼の下宿先からの帰り道