散歩道
リリー

 京福電鉄嵐山本線が近くを走る
 右京区の街の中
 名前も知らない小道を二人で歩く昼下がり

 小道には金網の張ってある敷地に沿って
 大型プランターが路端に並び
 主枝を伸ばし茂る葉と
 溢れるほど実が成っているミニトマト

 隣りには茄子の紫
 これはシシトウか青唐辛子のどちらだろう
 その隣にはまた胡瓜の緑
 オクラの花は薄黄色

 指先でちょこっと触れてみるミニトマトの
 赤
 「とるなよ!」
 同級生の彼が私へ浴びせた
 本気な声色

 ふたりで進む小道には歩を止めてしまう
 ものばかり
 それは民家の軒下に並ぶ鉢植えの花
 それは日が照りつける可愛らしい三輪車
 それは古民家の軒先に置かれた睡蓮鉢

 やがて進む正面が四条通
 小路横切るバスの車体が白く小さく見えた
 雑多なビルや駐輪場の路傍を歩く

 隣で歩調を合わせてくれる
 彼の腕を引き寄せて
 二人は黙ったままで手をつなぐ

 大通りまではまだもう少し
 バス停まではまだもう少しある
 彼の下宿先からの帰り道



自由詩 散歩道 Copyright リリー 2023-01-22 15:15:49
notebook Home 戻る