つま先の先
三月雨

凍り付く 空にかざした薄ガラス

ぽつ、ぽつり 浮かんで
じわり、じわ 滲む
淡色の灯


昨夏着られなかったままの
新品の浴衣の布地

それとも十年ぶりに焼いた
パウンドケーキのドライフルーツ
(その周りの美味しいところ)

一人で生きて一人で死ぬ誰かが
ほんの数年過ごした恋


今にも割れそうな空気に晒され
懸命に光を反射する

きら、きらり
きらきら


一歩先は見えない
その理由は、

眩しすぎるから   で、あればいい




自由詩 つま先の先 Copyright 三月雨 2023-01-19 20:34:44
notebook Home