戦士エイソスの苛立ち(三)
朧月夜
戦士エイソスは、直接祭祀クーラスの元を訪れることも考えていた。
(クシュリーやイリアス・ナディを攫わなくとも、
物事を良い方向に好転させるすべてはあります。
それは、エインスベルに恩赦を与えることです……)と。
もちろん、それは戦士エイソスの独断的な考えだった。
クールラントという国は、祭祀会議によって、
その政策を決定している。いわば、民主的な国家である。
そこへ私情を持ち込むことの危険性を、エイソスも知らないわけではなかった。
何よりも、祭祀クーラスという国家の重鎮を説き伏せることは、至難の業だろう。
だが、やってみるだけの価値はある。自分も、エインスベルも、クシュリーも、
国家に仇なす者たちだけを敵とすれば良い。そうすれば、エインスベルは悪ではなくなる。
……それは、エイソスという若者の考えだった。祭祀クーラスは、
その先を見つめていたのである。ランランテ大陸すべての国家の行く末を。
一度開放された魔力は、すべてを破壊しつくすまで止まらない、と。
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クールラントの詩