母の背中
ベンジャミン

感情が表に出やすいのは
母ゆずりだ

そんなところだけでなく
顔も話し方も似ている
考えていることも何となく
わかってしまうのだ
けれど

母は僕の拒食を理解できない

夕食どきになると
そんな口論が始まるのはいつものこと
分かり合えないことを
話し合うことは無駄かもしれない
それでも口論を続けるのは
けして憎いからではないのだ

(わかっている)

毎晩きちんと
一人分の食事を用意する母の気持ちも
それを無理やり詰め込み
そして吐く僕も

(わかっている)

今日も
夕食を詰め込んで吐いた
僕が戻ってくると
母は
顔をふところにうずめていた

(泣いている)

もう何度目だろうか
僕は
母の背中をさすりながら
泣くな 
泣くなと言い続ける
母は
ただただ泣き続ける
僕は
さすっていた手でそっと肩をもむ

(泣いている)

小さな部屋に似合う
小さな二人がいる
こんなにも似ているのに
母の背中は
どうしょうもなく小さ過ぎる

(知っている)

分かり合えていないわけではない
受け止めきれないことが
誰にだってあるのだ
一人分の食事を
母は
作り続け
僕は
食べ続ける
そして口論を繰り返しながら

こうして
たまに肩をもんであげる

(知っている)

そんな今日が
母の日だということも

僕は
とても感謝している

   


未詩・独白 母の背中 Copyright ベンジャミン 2005-05-08 19:49:25
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