いくつもの運命(七)
朧月夜

エインスベルの表情は、泰然自若としたものだった。
いや、実際には超然としていた、と書いたほうが良いだろう。
叔母ミーガンテへの復讐、ライランテ戦争、今回の監獄からの脱出、
事が起きるごとに、エインスベルの心は洗われていくようだった。

それは、決して良い意味においてではない。
エインスベルは、破壊と変遷のただなかにいた。
争いを招き、不幸をまとい、何もかもを変えようとしていく力。渦。
その中心にいるのが、魔導士ウィザムであるエインスベルだった。

彼女は、アイソニアの騎士を、そして戦士エイソスを愛していた。
そして、師である老オスファハンのことも慕っていた。
その彼らが、次々に戦乱や陰謀に巻き込まれていく。

そのことに、エインスベルは恐怖するのだった。しかし、
エインスベルは、その恐怖の感情を決して表には出さない。
魔導書に差しはさまれた栞のように、彼女はその心の奥底に恐れをしまいこんだ。


自由詩 いくつもの運命(七) Copyright 朧月夜 2023-01-14 16:30:35
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