いくつもの運命(六)
おぼろん

戦士エイソスは戸惑っていた。クシュリーが
これほどまでにエインスベルを憎んでいるとは、思わなかったのである。
彼は、初めてその妻に対して疑念を抱いた。
あるいは、彼女こそクールラントの運命を握っているのではないか?

そんな思いが、戦士エイソスの脳裏をかすめた。
彼は、クシュリーとエインスベルが和解することを、
お互いの才能や環境を認めあうことを望んでいた。
しかし、それは後になって、はかない望みだと分かった。

戦士エイソスは、この後アイソニアの騎士を殺す。クーラスの目論見どおり。
そして、エインスベルが彼の命を復活させる。そんな未来が、
戦士エイソスの心にふと思い浮かんだのだった。

(もしや、クシュリーは人間の生死を絶対のものとして、
 考えているのではないか?)と、戦士エイソスは思った。死を超越した存在、
あるいは神、それらをクシュリーは憎んでいるのではないかと。


自由詩 いくつもの運命(六) Copyright おぼろん 2023-01-10 13:22:53
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クールラントの詩