いくつもの運命(一)
朧月夜

その通りだった。アイソニアの騎士は、イリアスの元へと向かっていた。
すなわち、クールラントの祭祀クーラスの元へと。
このような陰謀を張り巡らすのは、彼以外にいない、
ということを確信していたのである。

その心のなかに、今やエインスベルの面影はなかった。
彼は、未来の妻たるイリアスを全面的に愛していたのである。
アイソニアの騎士は、エインスベルから渡されたグロリオサの花を、
今もしっかりと胸に収めていた。しかし……

グロリオサの花言葉は、「勇猛果敢」そして「栄光」である。
アイソニアの騎士は、思わずその花を踏みにじろうとした。
しかし、その途端にエインスベルの笑顔が目の前をかすめる。

彼女は、アイソニアの騎士と一緒にいたころ、笑ったことがなかった。
(冷たい女だ)アイソニアの騎士は思っていた。
(エインスベルは何をしようとしている?)再びの疑念がアイソニアの騎士を襲う。


自由詩 いくつもの運命(一) Copyright 朧月夜 2023-01-06 23:23:45
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クールラントの詩