コカインスェット
モマリサ公

なんだか灰色の空だな

シャブ中で捕まっている夫と
くらしていた家は
おじからかりていたもので
おじは今
母の働いている透析の
病院の
院長先生をしていて
このお正月に
すべてか
らっぽになった
その家をみにいって
母に
「なつかしいなあ」
と携帯から
電話をしたという

今年は
たくさんスノーボードにいこうと
ウェアを新調したり
板やビンディングと
いった用具を
そろえたけれども
仕事がなく
年末のイベントで
ひとにたよりすぎた
ためにお金がない

日々自分の力が
弱くなってきたのをかんじる
「もう充分に生きたのではないか」
生きる事を
選択し続ける疑問
が足元から影みたくのびる

昨日は
補修屋の営業をして
建築中の現場をみつけては
現場監督に
「飛び込みで営業を
してまわっているものですが」
とぺこぺこした

「獄中離婚」
をグーグルで検索すると
あいてが承認すれば
ものすごく簡単にできる
ことがわかり
あいてをどう
納得させるか
について考えていたら
眠れなかった

モーレツに記憶が
失われていて
ただ間違えを
おかしたことだけ
よくおぼえていて
ときどき声が出る

そういえば
シャブ中で捕まっている夫と
くらしていた最初の一年間は
ムダにしあわせでしらふで
虹をみたり
なにもかもが大丈夫におもえた

子供が産まれて一年すぎると
夫は
「ガンジャが吸いたい」
からお金をよこせといい
全然理解できない瞬間と
その意味について
空をみあげると
東京は空から雪がふるほど寒くて
車のなかで
乳飲み子をかかえて
夫がガンジャを買って
帰ってくるのをまつという
のが定例になりつつあり
最終的に彼はコカインや
覚醒剤をアートだといいはじめ
仕事をやめてしまい
若い女の子とアートをはじめ
つまりウェットにとんでないし
ひねりもない限界もない
いいわけがましい映像

そのころ一歳二ヶ月に
なる娘は
おたふくにかかり
あたしは
ネグレクトに手を出し
娘は
笑いも泣きも
しなくなった
生き残るために
感情をシャットアウト
したのだ
あたしは常に
あと一歩で
娘を殺してしまいそうで
自分をコントロール
できなくなっていく
刃物をもちだし
夫を殺そうとして

目が覚めると
家中の刃物は
どこかに隠されてしまっていた

友人たちの即座の
判断によりあたしたちは
母親の元に管理されることになり
夫はどこにいるのか
わからなくなったり
薬物の所持使用
及び売買で2010年までは
小菅の刑務所にいる
ことになったりした

あたしはときどき
パニックをおこし
帰る道がわからなくなった

今もときどき呼吸が浅くなる
もうちょっと
がんばれば大丈夫になるから
といいきかせながら
ちょっとずつアクセルを踏む









 


自由詩 コカインスェット Copyright モマリサ公 2023-01-05 16:50:42
notebook Home