ニュー・イヤーズ・バット・オールド・イヤーズ
ホロウ・シカエルボク
何も始まったりしない
何も終わったりしない
俺たちがその時々で
都合のいいものを拾っているだけなのさ
凍てついた街路
野良猫の悲しみが
センターラインの上で真っ二つに裂ける深夜
未確認飛行物体は誰にも気づかれることなく
時計台の向こうへと消えていく、おお、エイリアン
もう君の存在はホットじゃない
笑い方なんてとうに忘れた
素直な涙の流し方も
打算を利口だと信じ込んで
人々は明日も満員の電車に乗り込む
流星群の夜にしか
もう誰も空を見上げたりしない
ファンタジーさえもインスタントに扱われる世界
タップして手に入る現実の軽さしかもう若者たちは受け止められない
何も始まったりしない
何も終わったりしない
時間がかかっていたことが簡単に済むようになって
人々は考えることを忘れてしまった
車道で死んだ猫の死体を片付けるのには優しさだけあればいい
俺はオーバーイヤーの中で
もう死んだやつの歌で心をなだめてる
誰だってヒーローになれる
誰だってヒーローになれる
暗いうちに眠ることも出来ない
でもそんなやつはきっと
誰よりも夜明けの美しさについて語ることが出来る
港の側で
北風に吹かれながら君に手紙を書くよ
どうか思い出してほしい
薄ら寒いくらいの純粋が二人にあったことを
歯の浮くような音楽を聴きながら
未来なんて欲しいとも思わなかった青臭い日々を
下らない思い出の間にだって
どこかの海に中途半端なミサイルが落下している
人間が人間を
ゲームのように引き裂いている
誰もが十五分のニュース映像だけでわかったような口をきくけれど
彼らは死体の臭いひとつ嗅いだことなんてないんだぜ
戦わない生きものなど居ない
問題はそれが
何のための戦いなのかってことなのさ
喜劇役者のように気付かない振りをして愚かしい街を歩く
手っ取り早い悟りとプライドが簡単に拳を固くしている
知ったこっちゃないよ、俺には関係がないことだ
生きているうちに得られるものなんてほとんどが噓だって知っているんだから
ほら、殴り合え
せめて退屈なやつらの
束の間の見世物になるがいいさ
動画を撮ってる連中が
お前たちを世界一馬鹿な人間の部類として世界中にさらしてくれるかもしれないぜ
それが朝だろうと夜だろうと
世界はどこかどす黒い霧に覆われているみたいだ
胡散臭い風邪の話にみんな顔色を失くして
胡散臭い薬に群がってはドミノみたいに倒れていく
因果関係は決して証明出来ない
本当は皆わかっているだろうに
ニュー・イヤーズ・デイ、浮かれたやつらが
奇声を上げながら表通りを歩いている
何がそんなに楽しいんだ?
俺は新しい詩を書きながら
一生あんなふうに叫ぶことなんてないだろうな、なんて考える
すると無性に可笑しくなって
手を止めて少しの間笑い続けてしまうのさ
日付がひとつ変わっただけなのに
妙に希望に満ちた顔をしていたり
おめでとうと何度も言い合ったりして
なんとも滑稽な光景ではあるけれど
だけどそんなもんに真面目に乗っかることも
時にはきっと大事なんだろうな
ほら、俺だってたまにはそんなことをする
そして、悪くないなって思ったりもするんだぜ
しるしが必要なんだ
生きていくために
楔になるようなものが
あと一歩を踏み出せるような刺激的なきっかけがさ
でも俺にとってはそれじゃない
俺にとってはそれは違うものなんだ
俺は自分にとって必要なものを知ってる
そしておそらくは
ほんの少し先へ進むやりかたもね
人殺しのニュースがテレビで流れる
俺たちは時々
壊れてしまったものに強い感情を感じて
心を揺さぶられたりもするけれど
だけど間違っちゃいけない
それは純粋には違いないけれど
裁かれる以外どこにも行けない
ヴィデオゲームでたくさんの人間をヘッドショットしながら
冷めたカフェオレを胃袋に流し込む
時々戯れに君に電話をかけたくなる時があるんだ、決まって真夜中さ
もしかしたら君が絶対に眠っている時間だからなのかもしれないね
君は少々とろんとした声をして、だけどいったいどうしたのか知りたくて
一生懸命電話に出てくれるだろう
だけどそれがただの気紛れだってわかったら
一言も喋らずに通信を遮断するはずさ
昔みたいに機械的な音なんて続かない
それはあっさりと沈黙に飲み込まれるだけさ
何も無いってもうとっくにわかってるんだ
なのにどうして今夜もこうして懸命に
生きていたって記録を残そうとしているんだ
もしかした本当にわかっていることは
いまだって何もわかっちゃいないんだってことだけなのかもしれないな
輪郭あたりを数発スナイパーライフルで撃たれたみたいな
ぼんやりとした月が空に浮かんでいる
人類は本当に月面を踏んだのか
だけどそれを云々するのってそんなに大事なことなのかい?
けたたましい鳴声の鳥がずっとなにかを訴えてる
いったいどうしたって言うんだ
お前の声を聞いていると
俺はたまらなく悲しい気持ちになってくるんだぜ