ハッジズの野望(二)
朧月夜

しかし、ハッジズにはそれでも捨てられない野心があった。
アースランテをライランテ大陸一の国家にする、という思いである。
彼の価値基準によれば、クールラント、ラゴス、
そしてファシブルは滅ぼされねばならない国家だった。

自分の統治するアースランテこそが、ライランテの未来を
清浄なものとして導いてゆくことが出来る。そう思っていた。
政治は腐敗するものだ。しかし、アースランテにはその腐敗がない。
祭祀クーラスが統治するクールラントなど、言わずもがななのである。

そしてファシブルも、官僚による腐敗した政治が横行していた。
国母たるマリアノス・アリア・ガルデは、もはや権力を有していない。
ファシブルは、拡張路線に舵を切った。アースランテも併呑されようとしている。

ハッジズの息子クレールは、そんなハッジズに懸念を抱いていた。
(父上は、再びこのアースランテに滅亡の危機をもたらしているのではないか?)と。
齟齬とは、最も親しい間柄において、生じるものなのである。


自由詩 ハッジズの野望(二) Copyright 朧月夜 2022-12-30 21:28:07
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