幸福のありか
朧月夜
月の満ち欠けに思いをたくして、
わたしのこころは欠け、
また満ちる。
思い出のなかに、幸福はあったか?
いや、幸福などというものに、
価値はあったか?
月の満ち欠けに思いを尋ねて、
わたしのこころは問い、
そして答える。
幸福などという幻に、
取りつかれてはいないのだ。
ただ生きるように生きている。
そんなわたしの慰めは、
冬の夜空に光る星たち。
真夏のスモッグは今はなく、
夜まで清澄な空気が続く。
そして迎えられる、
天国の門に。
そこを潜り抜けることは、
針の穴を通るよりも難しいという。
最初から諦めを……と、
彼の人は言いたかったのかもしれない。
天国などどこにもないと、
生きてきて思った。
それはこころのなかにだけあるものと、
教えられたような気がする。
だから、振り向かないで。
えんえんと続く道は、
救いへの道しるべ。
それは幸福ではない──と、たしかに。
月の満ち欠けに思いをたくして、
わたしのこころは欠け、
また満ちる。
思い出のなかに、幸福はあったか?
その問いすら無意味なほどに、
わたしは生きてきてしまった。
月の満ち欠けに思いを尋ねて、
わたしのこころは問い、
そして答える。
人と出会い、あるいは別れ、
その瞬間に、
夢の園はたしかにあったのだと……
いつかはそこで、すべての人々が出会えるのだと。