知らないお祭り
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赤いゆびに絡まれ
知らないお祭りに行った
ひとつとして確かなものがない
不思議な空間

境内は水いろで甘い
不揃いなお提灯の踏みならす
威勢のよいはっきょい
仔犬の氏子さんに
勧められたお神酒が
ちょっと埃っぽくて

どんな神さまだって
ここでは笑顔でいたくなるだろう風情

轟いたり揺れたり
人がひとつとなる時間
消えてゆく闇のなんて大きな唇
ゆらゆら
どうどう

海の上で打ち上げ花火が開く
竜巻の吸口がゆっくりと延び
どこかへ飛んでゆく
鏡は幾らでも続く

縄張りの境に切られたゆびは
ひとしきり転がって
窪みに立つ
次の送り主を探しだす
いち年の終わりは
宇宙の終わり
わたしを連れさる
いちまいの鏡が
音もなく割れる



短歌 知らないお祭り Copyright soft_machine 2022-12-28 15:27:21
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