夢の中
Lucy
昔住んでいた家に居た
夢の中で
とても広い家だった
廊下を歩き
部屋から部屋へ移動した
懐かしかった
ふきぬけの階段を駆け上がり
手すりにのぼって
下を見た
*
揺り椅子に腰掛けていたひとが
僕を見上げた
青い澄んだ目
光る髪
白い服を着て
門の外へは出ないのに
いつも
庭の花や虫や鳥や
木や空と話して
とても好きだった
彼女のうたが・・
*
姉さんが見つけて
僕を追い出そうとした
僕は逃げながら叫んだ
エミリー!
僕を忘れたの?
彼女の耳には
ニャーとしか聞こえなかったんだ
*
僕は泣きながら目を覚ます
ベッドからひらりと
降りようとして
背中が軋んだ
ヨロヨロと立ちあがる
いつの間にか
老人になった夢をみている
本棚に
エミリーの詩集はない
この街へ引っ越したとき
捨ててきちゃったんだ
もう 要らないと思って
*
図書館で探すと
その本はあった
ページはくすんで
表紙はかなり傷んでいた
数え切れないくらいたくさんの人が
エミリーの詩を読んだんだ
きっとたくさんの人の凍えた指が
彼女の紡いだ言葉をなぞったのだろう
エミリー・ディキンスン
もう一度君に会いたい