小舟
這 いずる
話す言葉はむずかしく、
たくさんの誤解と不思議があって、
上手くあやつる人どこにもいない
納得いくような気がするケムに巻かれているだけ
なんだけど、
君は、自分にしか話しかけないから
随分と成功しているように見える
流れ出る音楽の言葉が
カッコイイ自分を定められる、と、
流暢なようで難解な自分にだけ分かる言葉を喋ってる
小舟が波にさらわれて
こっぱみじんになった
ひどくねじ曲がった木々が
ひどく腐った実をつけたように
ひどくねじ曲がった思考と体で
正常さを装った
失敗したのは仕方ないって
言い訳、
成功したらなんて言ってた
小舟が波に流されて
七十二日後に島に流れ着いた
くだらない丸がついたノートはもう捨てた
なんの価値もなかった
くだらない人の視線が誘導する未来
なんの価値になるって唾棄すべきだ
同じようなことなのに何故出来ない
小舟が波に呼ばれて
二度と見なかった
海と月が
白波を起こし
さらっていった可哀想な兎の
前足が音になる
海霧が君を覆い隠して
海上で揺れる影が
見えたようにも、見えなかったように
物語に深みを出す為の死
ささいないさかいのリアリティと
神話から形作る潮流の
過去は記録の中にしかない
君が居たことや居なかったことも
幸運の前足がカバンで揺れて
思い出の弱いアクセントのしらべ
揺れる記憶の波が波形になって
何十時間のピアノによく似た音を聞いてるうち
探す場所を間違えたことに気づく
誰かが居た足跡がある砂浜
海の風が強く吹き
強く嵐の空をして
雨が降りそうで
暗雲が低く垂れてくる
モールス信号が鳴っている
鳴っているだけ
誰か聞いているのか
伝わらないのに
伝わったような気がして
救われたような気がして、
気がするだけだった
弱々しく揺れた