ドイツの思い出
秋田の米はうまい

シュトゥットガルトの朝はいつもコーヒーの匂いで目覚めた。

朝の気温低下で水蒸気でくもった窓からはブドウ畑の斜面が見え、大きな灰色の野ウサギが横切って行く。

ドイツのプレッツェルは日本のパンと違ってかたくても歯をたてるとざっくり噛み切れる。大きな結晶の岩塩がついたプレッツェルをニ枚にスライスしてハムを挟んで食べる。スモーキーな香りと岩塩の旨味がとても美味しい。

私が滞在したときはちょうどもののけ姫とエヴァンゲリオンを上映していて大学生のダニエルは日本のアニメをしきりにクールだと言っていた。

昼間はほとんどホストの伯母さんがまだ行ったことのない街へ連れて行ってくれた。
大昔に隕石の落ちたあとに街を作ったノルトリンゲン、大学の街ハイデルベルク、300キロ離れたミュンヘンにも行った。
近くの街へは電車で移動したが、日本と違って無防備に居眠りする人はいない。
途中外に村の手作りの観覧車が見えたが回転スピードが異様に早いのが怖かった。

昼食をレストランで食べるときにドイツ語を伯母さんが教えてくれた。
ヴァズイストディトアレッテ?(トイレは何処ですか?)
イッヒハーベフンガー(私はお腹がすいた)
イッヒミヒテナハウーゼゲーエ(私は家に帰りたい)
観光地ではトイレでお金を払う。何処かのお城の中のトイレで番をしていた赤毛のベリーショートのおばさんがお洒落で妙に印象的だった。


夕方、健脚の友達がブドウ畑を登りたいと言うので渋々ついていった。

登っても登っても道が続いていて上の方に出たときに鐘の音がした。
はるか向こう側の高台に小さな集落があって、夜でも白夜みたいに沈みきれない太陽のせいで色を失って白くぼんやり光っていた。
ダニエルの友達で ハンサムだけれど陽気すぎる(名前が思い出せないが、確か)ミカエルが上半身裸で逆立ちしていた。
私も友達もTVゲームばかりしてマンガしか読まないような人間だったから、見たことがないような青春を謳歌する同年代の若者が異世界だった。


散文(批評随筆小説等) ドイツの思い出 Copyright 秋田の米はうまい 2022-12-25 20:26:24
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