かたわの鹿
ただのみきや
憑かれた顔で名前をつけて
真白い昼のわななき
くしけずられない太陽の蓬髪に
聞えるかあの空の
棺の底を引っ掻いて
瞳の梯子を錆びさせる
凍った舌の有刺鉄線が
ああ吐息の結ぼれ
透けて漂う蛭子の花弁よ
にじり寄る手首に括られた
鈴に宿ってすすり泣く
光のようにいつまでも
氷結しない痛みの振子
濁った金滓をこぼしながら
焦げついた心臓を運べ運べ
そう朴訥な天罰
瞑った星の落ちて来る
雪原を右往左往
かたわの鹿のように
群れから追われて鉈になれ
蝕された朝の茫漠に一点の
《2022年12月25日》