イリアスの矜持(五)
朧月夜

「アースランテは負けません。クールラントにも、
 ラゴスにも、ファシブルにも……」
「あなたは、一つ事を忘れています。ヒスフェル聖国です」
「ヒスフェル聖国……」イリアスは息を呑んだ。

「実は、クールラントにとっても、ヒスフェル聖国は、
 最大の敵なのです。かの国は、何を考えているのか分からない。
 あるいは、魔導によって、この世界を支配しようとしているのか……」
「魔導とは、危険な手法です」

「左様。この世界は祈りによってのみ、導かれるべきものです」
「そのために、アイソニアの騎士、そしてエインスベルが、
 葬られるべき存在だと考えているのですね……」
 
「あなたは、わたしの予想以上に多くのことを知っていらっしゃる。
 あなたが成人に達していれば、交渉の糸口もあったでしょう。
 しかし、今、あなたはその命を賭さなければいけない」クーラスは笑った。


自由詩 イリアスの矜持(五) Copyright 朧月夜 2022-12-25 14:27:54
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クールラントの詩