祭祀クーラスとフランキス(四)
朧月夜
「ところでだ、フランキス。お前はよもや、
クシュリーの身を奪い損なったからと言って、
わたしを裏切ろうとしてなどいないだろうな?」
そのクーラスの言葉に、フランキスは思わず青ざめた。
「滅相もございません。わたしがクーラス様を裏切るなどと……」
しかし、その懐中には彼を殺すためのダガーがあった。
祭祀クーラスが失脚、いや死亡するとなれば、その後継には、
穏健派のガーリアス・ギザ・ハリガルデが当たるであろう。
フランキスは、額にじとりとした汗を滲ませた。
「エインスベルがまた野に放たれた今、手段は選んでいられない」
祭祀クーラスは、焦りというよりも、怒りを含んだ口調で言った。
「場合によっては、ジギリス・ア・アルヌーを廃嫡することも、
考えておかなければなるまい」クーラスは顎に拳を当てる。
(この方は、もしやクールラントの王になろうとしているのか?)
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クールラントの詩