夜明け
ふるる
夜通し
狭くて暗い
空飛ぶ輸送機に乗って
発着場まで
みんな順番待ち
大人しくして黙って
雪の降る静かな朝に
古い鞄に必要なものだけ入れて
お弁当は少し
おやつは沢山
あげたい子がいるから
仲良くしたいから
ラッパに似た音色で
着陸の合図
見えるのは白い雪のうえ青白い灯り
白い服の彼ら
大人しくして黙って
私たちの顔も見ない
怖がっているんだと言っていた
でも仲良くはしたいな
おやつ美味しいからあげたい
とても美味しいから
鼻がむずむずする匂い
雪の綺麗な冷たい匂い
彼らがまとうのはそういうもの
冷たくて綺麗ででもそれだけ
好きなひとはいるのですか
最後に会いたいひとは誰ですか
聞きたいけど
まだそんなに仲良くはない
どうすれば怖がらずに話してもらえるかな
きっと無理だよね
恐怖は自分のこころが作る
大切なものだから
夜明け前なのでおぼつかなく
雪を踏み前を行く彼らの
安寧を祈ると
やはり怯えてしまうので
こころの中だけのことにする
もうすぐです、と言われてみると
薄暗い中心に大きな穴があり
黒々とした口のようだけれど
かまわず降りて行き
ふりあおぐと
やはり彼らは驚き
畏れと羨望が混じった
恍惚とした顔で私たちを見下ろし
しんしんと頭をたれ
あるいはうなだれて
その場から足早に立ち去る
夜が明ければ
穴の中はこんなにも美しいのに
それを彼らはけして知ることがない