タイドプール
あらい

夢や希望の曲線美から形を得て
泳げもしない、音符と休符
無謀と勇気の不可視化はとても春 
浮いたり沈んだり 
気まぐれなお月様
見上げたり、貶めたり、目を瞑ったり

わたしたちの動力はとても胡散臭く無礼なもの
まだ まだ まだ濁っている 
木管楽器のながれぼしを聞いて
飲み込めたものじゃない 
37.5℃の日光浴で漏電するソーラーカーに乗って

――溺れてもいないでしょう
  いないのでしょ
(溶岩石を溶かし込んでも)

球体の漫画喫茶から霊柩車がささやき
空蝉の空からは喫煙のビートがひろがる
無邪気なミルクチョコレートは溶けてしまった

そこにない いらないのか
みようとしていない、のか――

それだけ それだけを事実とし 歌うことにする
わたしを レリーフにする ハッチポッチぼっちの烏鷺

私がわたし以上に姿を見せる 
あしのはえた金魚の尾鰭に魅入られ
私を置いて先に進んでいく 
遠からず、遅からず おしべめしべ
置き去りにされた私は むかでめりべ 
待ち伏せられた 遺失物たち

逃げ出してしまった過去や未来が『ある』ことって、
なんて可愛そうな 蛍の点滅 
残された不安と恐怖と郷愁と憐憫、
手のひらにのこされた血晶 愛と憎しみだけだってね。

娯楽と塩湖と金縛りの答案は
すべてのひとに臨死体験を教え
ヨボヨボの羊と等身大の深海魚が近道の末路で背くらべだって

手に余る、見きれない、あしがはえる
くさりおちた我々の文化としての、首吊りピエロと愛されたい犬


自由詩 タイドプール Copyright あらい 2022-12-17 00:34:47
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