暗闇のなかの戦い(六)
朧月夜

たしかに、イリアス・ナディは、クールラントの国で幽閉されていた。
アイソニアの騎士は、何よりもそれを恐れていた。
祭祀クーラスが、イリアス・ナディを虜にしていることを。
そして、それは今や現実の出来事となっているのだった。

「クーラスの思うところが分からない。奴は何を目論んでいるのだ?」
「おそらく、エインスベル様の死でしょう」ヨランは、はっきりと言い切った。
「エインスベル、イリアス。俺はどちらを選ぶことも出来ない」
アイソニアの騎士は、苦渋に満ちた表情で言った。

「どちらかを選ぶ必要はありません。どちらをも救うのです」
ヨランは、彼を救うとも、憐れむとも言える表情で言った。
「今は、本物のイリアス様を救うべき時です」

「そ、そうだな。エインスベルは自力で何とかするだろう。
 しかし、イリアスはまだ少女なのだ。俺が何とかしなければ……」
「そうです。騎士様。もう手は選んではいられないでしょう」


自由詩 暗闇のなかの戦い(六) Copyright 朧月夜 2022-12-14 17:59:00
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クールラントの詩