今、しずかさに包まれ
ひだかたけし
陽が落ちて
病、鎮まり
床に座す
日々ほぼ独り静観思索し
透明な湖面を滑るように
夜を迎える、
病の様相、伺いながら
病の苦痛、耐えながら
激すること抑え、狂うを正し
冷え切る肉に震え震え
今、
静かに、静かに
時は刻まれ
余計な欲望はほぼ削がれ
過剰な思いはほぼ排され
時々寂しくなるけれど
井戸を掘るように
独り、
内面を掘る
感覚された世界の
美しさ、醜さ、残酷さ
それらは皆、己の内に在るから
五感を超えた世界の己の実質を
世界の己の根拠を見極め
理念の残照から這い上がる
今、白い小部屋の明るみの中
わたしは静かさに包まれて
野焼きする夕べの農民のように*
平静に詩想し己の心の火を保つ
窺い知れない意識の深層を
宏大な聖なる宇宙の実相と重ね
言の葉舞う直観の舞台に上がる
裂開し静かに落ちて来た
一昨日の神の実感を
心の中に留め置き
命の限りに赦されて
わたしは生きる、
夜底のしずかさに包まれ
しずかさの奥へ億へ
*ゴッホ『野焼きする農民』より